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盗っ人と旅人

インドで長距離列車に乗っていたときのこと。

昼間は座席に腰掛けて、同じ車両に乗り合わせた外国人旅行者やインド人旅行者と話をしていました。
夜になると座敷は組み立てられて、3段式のベッドに変わりました。
いわゆる2等寝台です。

私は自分のかばんを枕にして、一番下のベッドに横になりました。
通路を挟んで向かいのベッドには、35歳でヒゲ面のイギリス人男性が寝ています。
しばらくすると車内は暗くなり、読書のための豆球も消え、話し声も聞こえなくなりました。

夜中の2時ころ、普段から眠りの浅い私は、ふと目を覚ましました。
チー・・・ガサゴソ・・・。
向かいで寝ているイギリス人男性の足元から不穏な音がするので目をやると、インド人がしゃがんでいました。

「なにしとんねん」

大阪弁で声をかけると、インド人は驚く様子もなくこちらを見ました。
顔が判別できて驚いたのは私です。
昼間一緒に喋っていて、友達になったと思っていたインド人だったからです。
そのインド人は私の目を見つめながら、表情を変えることなくイギリス人の足元にあったバッグから何かを抜き盗りました。

「こらーっ!」
私が大きな声を挙げると、手にしたブツを置いてインド人は走り去りました。

寝ていたイギリス人が起きてバッグを確認すると、カッターで切られたような大きな穴が開いていました。
幸い、盗まれた物は何もありませんでしたが、イギリス人は3万円もするバッグを買い替える羽目になりました。

それにしても、人の目を見ながら犯行に及ぶ盗っ人を見たのは、あとにも先にも初めてのことです。