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ガイドと旅人

カンボジアで世界遺産の「アンコールワット」を見物するために、プノンペンから船で移動しました。

シェムリアップという町に停船した途端、現地の客引きガイドが牛を食い尽くすピラニアのような勢いでウワ~ッと20人ほど寄ってきました。
どいつもこいつも怒ったような不自然な笑顔で、信用ならぬ顔ぶれです。
「プリーズ、ミスター、カム・ヒアー、フォロー・ミー・・・」

そんな客引きの声の中に、日本語らしき言葉が聞こえてきました。
「あなた日本人、わたし日本語、大丈夫、ウソじゃない、みんなウソつき・・・」
声の主は、少し目のつり上がったカンボジア人の青年でした。

信用しようかどうしようかと思案していると、船で乗り合わせた日本人青年が私に話しかけてきました。
「あぁいうヤツほど怪しいから、信用しないほうがいいですよね」
「うむ、確かに。けど、目つきは悪いし怪しいが、真摯な姿勢は窺える」

私はひとりでカンボジア人の青年についていき、 日本人青年は温和そうな小太りのカンボジア人のおじさんの後ろを歩いていきました。

私が選んだガイドの青年はT君といって、日本語学校へ通う学生で、日本語をマスターして日本人を専門にガイド職をしたいと語りました。
私が決めていた宿屋へ到着すると、T君は相場通りの金額を請求したので、チップを含めて支払いました。

シェムリアップに滞在中、観光へ出かけるときは、何度もT君を雇いました。
つまり、彼は信用に値する人物だったわけです。

5日後、とあるレストランで、船で別れた日本人に会うと、私の顔を見るなり、彼は悲愴な表情で言いました。
「太ったガイドについていったら森の中の小屋に監禁されて、貴重品と現金とトラベラーズチェックを奪われましたよ!
そしてそのまま置き去りにされて、5時間かけて町まで歩いたんですよ!!」

私は必死で笑いをこらえながら、ビールを1本差し出しました。