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インパラと旅人

インドのデリーで、海外旅行は初めてだという日本人青年に会いました。

彼は私と目が合うなり、うっすらと涙を浮かべながら語り始めました。
「空港からプリペイド・タクシーで町へ向かったんです。その方が安全だと聞いていたから。でも、ボクの指定したホテルには行ってくれなかったんです。火事で燃えたとかで。
そしてタクシーを降りるときにお金を請求されたんです。先に空港の受付で払っているのに。そのホテルでは一泊90ドルも取られたんです。バス・トイレ付きでしたけど。
そこで無理やり2泊させられたんです。部屋の外からカギをかけられて・・・」

それって軟禁ではないか!

私が目を輝かせて合いの手を入れると、彼の弁はさらに熱がこもりました。
「そう、軽い軟禁ですよ。しかも既に財布も奪われていましたし。このままでは殺されると思ったので大きな声でわめき散らし、ドアを蹴りまくったんです」
「ドアを壊して修理代に200ドルでも渡したか?」
「冗談じゃないですよ! こっちが本気で怒ったら向こうもわかったようで、ドアを開けてくれたんです。そして責任者と話をしたんですよ。金と財布を返せと」
「で、どうなった?」
「1泊50ドルにしてくれて、タクシー代と財布を返してもらいました」
「よかったじゃないか、キズが浅くて。で、財布の中身と現金は確認したんだろうな?」
「もち論です。ただ、返金されたお金は全てインドルピーですが・・・これだけあれば問題ないでしょう」
彼はズボンのポケットから丸まった札束を出し、私に見せました。
「数えたのか?」
「いえ・・・」
「1ドル何ルピーかレートは知っているのか?」
「いえ・・・ でも、これだけあれば・・・」
「今すぐ数えろ! 1ドルは約42ルピーだ!」

数えた結果、彼の手元には返金されるべき金額の25%しかありませんでした。
私の目には彼が、サバンナで猛獣に食われるインパラのように見えました。