睡眠薬と旅人

インドのコルカタを旅していたときのこと。

病院から退院してきたばかりの日本人男性(Aさん)に会いました。
Aさんが観光名所の「ビクトリア・メモリアル」の前の公園で休んでいると、小奇麗なインド人の2人組が話しかけてきたそうです。
彼らは地元の教師だと名乗り、日本の文化について話を聞かせてくれと言いながら、生徒たちと家族の写真をAさんに見せました。
子供たちの写真を見せられて気を許したAさんは、日本の神道や禅、それに天皇制についてできる限り説明しました。

話の途中でインド人のひとりが、近くにある売店でコーラとビスケットを買ってきました。
3人でジュースを飲み、ビスケットをつまみながら談笑は続きました・・・。

・・・ Aさんの記憶はそこで消えていました。

目が覚めると病院のベッドの上で、ショルダーバッグ、ウエストポーチ、首から下げていた貴重品袋が失くなっていたそうです。
しかも病院で目が覚めたのは、ビスケットを食べてから3日後のことでした。

Aさんは気丈な人で、貴重品を盗られたことを残念がりませんでした。
隙があった自分が甘かったのだと。

ただ、悔しいのは、3日目の朝、冬眠から目覚めたようにすんごく気持ち良かったことだそうです。